「ダブル・ファンタジー」
「ダブル・ファンタジー」 村山由佳著 文藝春秋社
誰の言葉か忘れてしまったが、この分厚い小説を読んで
「他人に抱かれる度、少しだけ死んだ気がする」
というフレーズが頭の中をループして、終わらない。
主人公の奈津は結婚していながら、性的にオープンな人であり
脚本家という仕事上、知り合った男たちと切れることなく
夫とはできない営みを行い、自分の欲求を満たそうとする。
かといって、「寝る」ことだけが彼女を満たすのではなく
彼女が選ぶ相手の条件には「話がうまい」「尊敬できる」などの
要素も加味されねばならず、彼女は常に惚れてしまうのだ。
相手には妻がいて、最初は一晩だけ、ともにしたいと願う。
それが、終わった後にはもう一度会いたいと期待する。
二度目があったら、好きになってほしいとまで考えてしまう。
結局、メールをガンガン送る彼女を疎ましく感じた人もあれば
家庭とのバランスがとれなくなった人もあり
離れていってしまう男たちは、彼女の強欲なエネルギーに疲れるのだろう。
もっと、もっと。最後には愛してほしいとまで懇願する女は
自分がそういう女だと気づいていない節があるから、タチが悪い。
さらに厄介なのは、脚本家という仕事のせいなのか
彼女が相手の言動を深読みし、それでいて自分を抑制しようともがき
恋でも愛でもない、この状態をあまり楽しめていないことだと思う。
彼女には男が常時、必要なのだが、いたらいたで孤独を感じる。
かといって、男がいないと「自由ってなんてさびしい」と震えてしまうのだ。
女の欲深さと傷つきやすさと、さまざまな表情を読みながら
共感するかどうかは、大きく分かれる本かもしれない。

