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2012年2月15日 (水)

「さらば雑司ヶ谷」

「さらば雑司ヶ谷」 樋口毅宏著 新潮社

TBSラジオ「キラ☆キラ」のパーソナリティでもある、浅草キッドの

水道橋博士が昨年、猛烈にプッシュしていた本「民宿雪国」作者の

デビュー作。最近、文庫化され、解説には水道橋博士と

映画評論家の町山智浩氏が寄稿されたそうな。

「民宿雪国」の世界にいまいち、馴染めなかった私。

その危惧はビンゴで、ツイッターで人々が熱烈に賛美するほど

自分の中には、入ってこなかった。

たとえば、これも昨年、一部マニアの署名運動によって

日本公開が実現した映画「キック・アス」。

たとえば、マフィアやギャングを題材としたノワールと呼ばれる

数々の映画群。

そこにあるのは、暴力と殺戮と鑑賞する者を置いていくほどの

スピード感だったりする。

暴力が日常にあり、他人を傷つけることに躊躇のない人生を

ファンタジーとして、もしくはある種のリアルな物語として読めるほど

私自身、そして自分の人生に「他者への暴力」は存在しないのだな

と、咀嚼しきれない小説を読み終わって、あらためて思う。

巻末には、著者がオマージュを捧げた作品が列挙されてあったが

残念なことに、ほとんど縁のないものばかり。

これでは、本作の理解度もかなり低いと言わざるを得ない。

「攻殻機動隊」の暴力が受け入れられて、これがダメなのはなぜなのか。

いろいろと考えてみたけれど、まだ答えは出ていないわけで。

2012年2月11日 (土)

「ほかならぬ人へ」

「ほかならぬ人へ」 白石一文著 祥伝社

2010年142回直木賞を受賞した表題作と

「かけがえのない人へ」の二編が入った一冊。

物語は二つとも、恋愛と結婚をめぐってあれこれ惑う男女を通して

「ほかならぬ」「かけがえのない」人と出会うことの難しさや

人との縁の不思議さや大切さを感じさせてくれる、作品だった。

知り合いをみても、10年同棲して別れた人もいれば

婚約中に違う男性からプロポーズして、乗り換えた人もいる。

熱烈な恋愛をして結婚しても、奥さんをボロカスにけなす人もいる。

一つひとつのカップルにそれぞれの物語と時間があって

うまくいく場合もあれば、そうでない場合もある。

恋愛は心を全開するものだが、結婚は心を半分閉じるものかもなあ。

なんて、バツイチの私が言っても説得力がないけれど

ほとんど恋愛を卒業してしまった自分がこんな小説を読むと

若い頃、好きな相手が笑顔で振り返っただけでうれしかった

そんな自分が懐かしく、切なく、遠く感じられて、きゅんとした。

恋愛にも結婚にも、いろんなステージがあって

ラブモードあり、バトルモードあり、小さな幸せたくさん、あり。

失った人であっても、その人との出会いがいま

私をこの場所へ運んできてくれたのだなと、しみじみ考え込んだ立春の日。

2012年2月 9日 (木)

笑顔で悼む、ということ

ライター、編集者など、サブカルチャーのさまざまな分野で

活躍した、川勝正幸さんが火事で突然亡くなったとき

私がフォローしている人々が一斉に、追悼のことばをつぶやき続けた。

寡聞にして、彼のことを全く知らなかった私だが

TBSラジオ「DIG」では、2月3日の放送ほとんどすべてを使い

彼にゆかりのある人を呼んで、追悼番組を放送した。

パーソナリティ・大根仁監督の「今日はしんみり、禁止だから」

という言葉どおり、集まった人々はそこにはいない川勝さんについて

笑えるエピソードを語り合い、ときには泣き笑いながら、時を過ごした。

立川談志さんのお別れ会のとき、

「故人が戻ってこないよう、万歳三唱しまーす」と笑った人々が思い出され

川勝さんにしろ、談志さんにしろ、たくさんの人に深く愛されているんだな

と、うらやましくもあり、「悼む」ということの意味をいろいろと考えた。

ラジオに参加した人々は一緒の事務所だったり、放送作家だったり

ミュージシャンだったりと仕事も年齢もいろいろだったが

誰よりも早く、面白い芝居、新しい音楽、楽しい映画をみつける人だった

川勝さんに見出されて賞賛されたり、仕事仲間を紹介されたりと

今の仕事につながる大切な点を、皆が持っており、感謝していた。

ウッディ・アレンのファンだったそうだから、私も知らない間に

彼の書いた映画評論を読んでいたかもしれない。

いい仕事と結んだ縁は、愛とともにそれぞれの胸に残ることを

この追悼ラジオは、あらためて教えてくれた。

合掌。

2012年2月 7日 (火)

「深呼吸する惑星」

「深呼吸する惑星」 第三舞台復活&解散公演 WOWOW 2月4日オンエア

鴻上尚史氏が主宰する劇団・第三舞台の芝居は大学時代

一度だけ、見に行ったことがある。

たしか、いまはなき近鉄劇場で「天使は瞳を閉じて」だったと思う。

その後、劇団公演ではないけれど「スナフキンの手紙」を見たり

ファンの知り合いが持っていた「トランス」のビデオを見たりもした。

解散公演は東京、大阪など大都市で大々的に行われたが

チケットは即効で売り切れ、最終公演はシネコンでも中継されたとか。

物語は、近未来。地球と別の惑星とが自由に行き来できる時代のお話。

第三舞台定番のダンス、長野里美さんの着ぐるみなど

昔からのファン心をくすぐりつつ、人の記憶や幻覚をめぐる展開へ進む。

そして最後には、ちょうど劇団のメンバーが一人ひとりの道へ行くように

それぞれがおのおのの場所へと旅立っていく。

私は第三舞台にどっぷりはまったわけではなかったけれど

たとえ、ひとつの芝居だったとしても見ておいてよかったと思う。

あの時代にあった、熱量を持った芝居に触れたことは

私の心の小さな糧になったと、あらためて感じる。

鴻上さんは「SPA!」のコラムを書いておられるが、こちらも面白い。

ニッポン放送で番組をやったり、NHK「COOL JAPAN」のMCをしたり

興味の幅と深さが大きい人なのだろう。

第三舞台という故郷を旅立って、彼がどんな作品を創っていくか

今度はぜひ、劇場で体感してみたいと思った。

2012年2月 5日 (日)

知らない人との袖振れあい

町をぼんやり歩いていて、知らない誰かに

道を訊かれたり、カメラのシャッターをお願いされたり

外国人にATMの操作をたずねられたり。

病院では、患者さんの愚痴まで長々と

聞くようになって、もう何年経つだろう。

関西、関東、地元と場所は問わず

若い、中年とわが年齢も問わず、そんなことは続いている。

最近でけっこう楽しいのは、ちびっ子(小学生)が

突進して質問してくる「いま、何時ですか?」というもの。

最初は、小学校5年生くらいの男の子三人が

(おまえ、きけよー、やだよー、でもさー)と揉めつつ

代表が勇気を出して、「あの、時間わかりますか?」ときた。

勉強道具らしきカバンを持っていなかった彼らは

一体、何のために時間を訊いてきたのか

しばらく想像して、楽しかった。

昨日、出くわしたのは小学校4年生くらいの女の子二人組。

コンビニに入ろうと私がドアを開ける寸前にダッシュしてきて

「すみません、時計持ってますか?」とハアハア訊いてきたので

二人に時計を見せつつ、「午後4時20分くらいかな」と答えた。

ぴょこんとお辞儀をして、走り去っていく二人はほのぼの、可愛かった。

時間をたずねられたわけではないけれど、あるシネコンに行ったとき

押すタイプのガラス扉を次に来る人のために押したままにしていたら

たまたま、私のすぐ後ろが小学1年生くらいの男の子で

その子が私の手の下を通るとき、ぺこりとお辞儀したときもうれしかった。

私の小学校の頃の夢は「小学校の先生になること」だったな。

町で小さな子に出会う度、子どもの持つ「未来という時間」の輝きにふれ

「なんぼでも、時計貸しますでー」と思う、おばちゃんなのであった。

2012年2月 3日 (金)

「ポーカーフェイス」

「ポーカーフェイス」 沢木耕太郎著 新潮社

最近、更年期障害なのか、激しい加齢のせいなのか

読んだ本のことも見た映画のことも、3秒くらいで忘れてしまう。

この本は、ツイッターで絶賛されていたので

超久しぶりにハードカバーを購入したのだが

読んだあと、内容をほとんど覚えていない自分が情けない。

沢木耕太郎さんとの出会いは高校時代。

向田邦子さんの文庫解説を書いておられて、その名を知った。

以来、「深夜特急」をのぞいて、ほぼ全部の著書を読んでいるが

「深夜特急」と同じく、今回の作品は私の何かに触れなかったのだろう。

ふりかえってみると、沢木さんの著書で私が惹かれるのは

沢木さんご本人にまつわるエピソードというより

ある第三者を丹念に取材し、インタビューして構築した本のようだ。

檀一雄夫人の語りによって、彼と家族のありようを描いた「檀」や

さまざまな人への取材から成る「馬車は走る」など

沢木氏の聞き出す能力が発揮された本に、魅力を感じている。

「彼らの流儀」も市井の人の小さなエピソードを綴った一冊だが

この文庫本も、何度読み返したかわからない。

なるほど。「ポーカーフェイス」はエッセイなので、自分は不得手だったのか?

と思いつつ、もう少し暖かくなったら、読み返してみる予定。

2012年1月31日 (火)

長崎ストーカー殺人

昨年12月、長崎県西海市でストーカー被害を受けていた娘の

祖母と母親がストーカーに殺害された事件で、先日、遺族の父親が

警察の対応について、マスコミに公表した。

ストーカー被害を受けていた娘の住む自治体、実家のある自治体

どこの警察に相談しても、ほとんど対応してもらえず

相談がたらい回しされ、家族は途方に暮れていたことが

父親の手記からは痛いほど、読んでとれる。

もし、どこかの警察のたった一人だけでも、真剣に話を聞き

加害者の危険性を察知していたなら、二人もの被害者を出す

凄惨な事件は起こらなかっただろう。

この事件関連の記事を読んでいて、激しくデジャブにおそわれ

「桶川ストーカー事件」のことが思い出されて、仕方なかった。

ストーカー規制法のきっかけになった殺人事件だったが

このときも、当該の警察はストーカーの相談にはまるで応じず

「事件が起きてませんからねえ」と、のたまっていたものだ。

もちろん、事件捜査が警察の使命かもしれないが

事件の芽を摘み取ることも同じく、彼らの使命なのではないだろうか。

長崎事件のお父上の無念をできるだけ、多くの人に知ってもらいたい。

そして、事件は決して他人事ではなく、自分のそばでも起き得る事

起きていないことの方が奇跡であることを、実感してほしい。

(毎日新聞・電子版の記事)

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120125k0000m040092000c.html

2012年1月29日 (日)

「贖罪」

「贖罪」 WOWOWドラマ 黒沢清監督 湊かなえオリジナル原作

TBSラジオ「キラ☆キラ」で宇多丸さんが絶賛していたドラマ。

「黒沢監督の演出が素晴らしくて、ディテールまで完璧」

とのことで、私も最初からチェックしてみたが

確かに、宇多丸さんの言う

「一度、禍々しいものに出会った人間がどうなっていくか」

が独特の質感と役者の演技によって、これでもかと提示されていく。

物語は小学生の仲良し女子5人組の一人が

男に連れ去られ、殺された事件を発端としている。

小泉今日子さん演じる被害者の母親から

「あんたたちがバカだから、犯人が捕まらないのよ。

あんたたちはあんたたちの方法で、贖いなさい。

あんたたちのことを私は絶対赦さないし、忘れない」

と10歳やそこらで言われてしまい、殺人現場にも遭遇した4人は

成長する過程で、その出来事から逃れられないまま

おとなになり、「贖罪」から離れないまま生きていくことになる。

ただ、思うのは、小学生の4人が偶然、事件に遭遇したからといって

女の子を連れ去った犯人の顔を覚えていないからといって

あそこまで、人生を棒にふるような生き方しか選んではいけないのだろうか。

被害者の母親が憎いのは、犯人であって

直前まで一緒に遊んでいた、彼女たちではないはず。

けれど、彼女たちはそれぞれの形で罪の意識を抱えたまま

15年の歳月を送り、普通の暮らしとは遠い場所で暮らしていくのだ。

ドラマは全5話で、4人の少女と母親の年月を描くことで

事件の真実と、事件に関わったことで変容した人生を考えさせていく。

世間では日々、殺人事件など凶悪事件が後を絶たないので

彼女たちが体験してしまったことは、もしかして、自分のことかもしれない。

たとえ、自分は普通に暮らしていようと努力しても

そんな積み重ねを一瞬で吹き飛ばす、出来事に遭遇しないとは限らない。

日常と非日常は紙一重の入れ子構造になっているのかなあと

ワイドショーが伝える事件を聞きながら、ぼんやりしてしまった。

2012年1月27日 (金)

「相棒ten」

昨年の11月からだったか、地元のテレビ局で「相棒」が再放送され

全然見たことなかった私だったが、「こんなに人気だしな」と

試しに見ることにしてみたら、やっぱり、シーズン10まで続くドラマ

だけあって、面白かった。

シーズン5だか6だかだったので、ウィキペディアで役柄を確認しつつ

そのシーズンを結局全部チェックした。

世のおばさま方みたいに「右京さーん」と水谷豊さんによろっと来ることは

ないけれど、1話1話が丁寧に作られているなあと思う。

相棒ふたりはもちろん、鑑識の米沢さん、トリオ・ザ・捜一、

組対5課の角田課長など、みなさんのキャラが立っているのが一つ。

そして、「刑事コロンボ」のように毎回豪華なゲスト俳優を迎えて

捜査が意外な証拠やヒントから、暴かれていくこと。

その両輪があいまって、視聴者を飽きさせないドラマになっているから

10年もシリーズが続き、視聴率も20%台を維持しているのだろう。

再放送では相棒が亀山さんのと、神戸さんのものを見たが

個人的にはミッチー演じる・神戸さんのクールさが好み。

最近解散した「第三舞台」の鴻上さんによると、「第三舞台」で

一番出世したのは(マネー的に)、「相棒」の脚本を書いている人らしい。

近頃は水曜21時が楽しみだが、裏番組の「ホンマでっかTV」も

視聴率的にかなり、健闘しているらしいとか。

そろそろレコーダーを買うべきときが来たかなあと

カカクコムを眺めながら、悩んだりしている。

2012年1月25日 (水)

「パレード」

「パレード」 行定勲監督 2010年 吉田修一著

山本周五郎賞受賞作品を「セカチュー」の行定監督が映画化。

物語は一つのアパートをシェアする、5人の若者のふわふわした

誰も人物像がはっきりしない雰囲気を描いている。

吉田修一さんといえば「悪人」が有名だが

残念なことに、私は原作をまだ一冊も読んでいない。

ただ、この映画からも、そして「悪人」からも伝わってくるのは

普通に暮らしているように見える人間がはらんでいる

禍々しさとか奥の深さとか、目には見えづらい怖さなのかもしれない。

彼らの住む町で起こる連続婦女暴行事件をきっかけに

少しずつ、明らかになってくる、一人ひとりの本当の内面。

誰にも言えないけれど、それをしないと自分でなくなってしまう

そんな行為や行動を、どんな人間でも持っているのだろうか。

「人間とは謎である」と17歳のときに書いたのは

ドストエフスキーだそうだが、吉田氏のテーマもまた

人間の底に流れる、それぞれの謎に迫ることなのだろうか。

この本はもう、出版されて時間が経っているので

図書館に久しぶりに出かけて、借りてみたいと考えている。

«いい男感知器は年齢知らず